天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
ほら、いまだって門をくぐってすぐに。
「天ヶ瀬くーん!!」
小走りで天ヶ瀬くんの名前を呼びながら近寄る女の子がひとり。
確か昨日から付き合ってる子だっけ?
彼女の変わるサイクル早すぎて、気づいたら女の子たちみんな同じ顔に見えてきた。
「天ヶ瀬くんってばー!」
イヤホンをスッと外して、ようやく女の子の存在に気づいた様子。
相変わらず、表情は興味なさそうだなぁ。
そのまま、彼女と一緒に下駄箱に向かっていって、そこから姿が見えなくなった。
そして数分後。
教室の扉がガラッと開いて、視線をそちらに向けると
さっきまで彼女と一緒だった天ヶ瀬くんがやって来た。
そのまま、わたしが座る席まで近づいて来る。