天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
重たい瞼を開けると、カーテンから入ってくる光と共に、あるやつの顔が飛び込んできた。
「やっと起きたか」
「……しゅーと…」
わたしの眠っているベッドにひょこっと顔を覗かせたこいつ。
鏑木愁桃(かぶらぎ しゅうと)
愁桃は生まれた時からずーっと一緒の幼なじみ。
家がお隣同士っていうありがちなパターンだけど
生まれた年も、生まれた日も一緒。
もともと親同士仲が良くて、お互いできた子供を結婚させたいとか考えていたみたいで。
それが偶然にも、浅葉家には女の子、鏑木家には男の子が生まれた。
ちなみに、わたしのももって名前と、
愁桃の名前は2人とも、"もも"が入っている。
わたしと愁桃が生まれた日に、桃の花がとても綺麗に咲いていたことから、
わたしは平仮名で、もも。
愁桃は漢字で桃が入っている。