天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
「じゃあ、浅葉さん。天ヶ瀬くんとプリントよろしくね?」
「え、あっはい」
天ヶ瀬くんとプリントお願いされちゃったよ。
クラスのみんなが帰っていって、
放課後の教室に2人っきり。
はじめて、天ヶ瀬くんと2人っきりなった、あの日の放課後と状況が全く一緒だ。
それは向こうも思ったみたいで。
「……なんか懐かしいね」
「そうだね」
結構前のことだけど、もう懐かしく感じてしまう。
わたしは身体を後ろにくるっと向けて、天ヶ瀬くんの机で日誌をまとめる。
日誌をまとめ終わってから、プリントをまとめる作業をすることにした。
すると、手が空いている天ヶ瀬くんがわたしの髪に触れはじめた。
「何かついてる?」
「ひまだから」
いや、質問と答えが噛み合ってないような気がするんだけど。