天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



「じゃあ、浅葉さん。天ヶ瀬くんとプリントよろしくね?」

「え、あっはい」


天ヶ瀬くんとプリントお願いされちゃったよ。

クラスのみんなが帰っていって、
放課後の教室に2人っきり。


はじめて、天ヶ瀬くんと2人っきりなった、あの日の放課後と状況が全く一緒だ。


それは向こうも思ったみたいで。


「……なんか懐かしいね」

「そうだね」


結構前のことだけど、もう懐かしく感じてしまう。

わたしは身体を後ろにくるっと向けて、天ヶ瀬くんの机で日誌をまとめる。


日誌をまとめ終わってから、プリントをまとめる作業をすることにした。


すると、手が空いている天ヶ瀬くんがわたしの髪に触れはじめた。


「何かついてる?」

「ひまだから」

いや、質問と答えが噛み合ってないような気がするんだけど。

< 310 / 327 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop