天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
「ももの髪ってふわふわしてる」
「そうかな?」
毛先をくるくる指でいじって、遊んでいる。
「しかも甘い匂いする」
「天ヶ瀬くんも甘い匂いするよ?」
「へー、自分じゃわかんない」
自分の匂いって、自分じゃわかんないものだからね。
すると、毛先で遊んでいた指先が、今度は頬をツンツンつついて、びよーんっと引っ張ってくる。
「いひゃいよ」
「うん、ひまだよね」
うーん、だから会話が噛み合ってないよ?
「そんなに触られてばっかりだと日誌が書き終わらないよ!」
「ももだから触りたいのに?」
っ!いや、ちょっと自分!ときめいちゃダメだよ!
「あ、いまドキッとしたでしょ?」
「っ、し、してません!」
フッと笑いながら、わたしの反応を見て遊んでいる。