天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
それから黙々と作業を続けて、終わりが見えたとき。
「あ、そういえば!」
今度はわたしが、あることを思い出して声を出した。
「天ヶ瀬くんに聞きたいことがあったの」
「星座とか聞かれるの勘弁だから」
「違うよ。唯乃さんのことで思い出したの」
本当かどうか、わからないけど。
唯乃さんが言っていたこと。
唯乃さんのご両親が海外に行っている間、天ヶ瀬くんの家でお世話になっているとき。
毎晩……抱きしめてもらってたって言ってた。
思い出さなきゃよかったのに。
このモヤモヤが晴らされていない。
そのことを天ヶ瀬くんに伝えると。
「あー……それほんと」
あっさり答えられて、地味にショックを受けた。だったら聞かなきゃよかったじゃんって話なんだろうけど。