天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



それから黙々と作業を続けて、終わりが見えたとき。


「あ、そういえば!」

今度はわたしが、あることを思い出して声を出した。


「天ヶ瀬くんに聞きたいことがあったの」

「星座とか聞かれるの勘弁だから」


「違うよ。唯乃さんのことで思い出したの」


本当かどうか、わからないけど。
唯乃さんが言っていたこと。

唯乃さんのご両親が海外に行っている間、天ヶ瀬くんの家でお世話になっているとき。


毎晩……抱きしめてもらってたって言ってた。

思い出さなきゃよかったのに。
このモヤモヤが晴らされていない。


そのことを天ヶ瀬くんに伝えると。


「あー……それほんと」


あっさり答えられて、地味にショックを受けた。だったら聞かなきゃよかったじゃんって話なんだろうけど。

< 316 / 327 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop