天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



「お前どーした。なんか目に涙溜まってるけど」


「ん……ちょっと昔のこと思い出してただけ」


「……また天ヶ瀬のこと?」

「っ、」


愁桃はわたしが密かに天ヶ瀬くんに想いを寄せていることを知っている。


もちろん、この過去の出来事も。


「お前いい加減諦め……」

「諦めるわけないじゃん」


愁桃はずっと口が酸っぱくなるくらい、天ヶ瀬くんはやめろって言ってくる。


あんなのただの女たらしだろとか言ってね。


確かに愁桃の言うことは間違ってないけど、これだけは仕方ない。


だって、好きって気持ちってどうやって消せばいいかなんてわからないんだもん。


「お前なぁ」


そして、もう一つ。
愁桃が天ヶ瀬くんのことをやめろと言う理由が。

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