天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
「ただ、もう少しだけ触れたいなぁって思って」
あれ、今日のわたしおかしいのかな?
いつもより、わがままがたくさん出てきちゃうし甘えてしまう。
「なんで今日に限ってそんな甘えん坊なわけ?」
「……甘えたい気分、だから?」
「勘弁してよ」
ついに、呆れてわたしを抱きしめるのをやめて、背中を向けられてしまった。
「天ヶ瀬くん?」
大きくて、広い背中をツンツン指でつつくと。
「なんか俺ばっかり余裕ないの腹立つからさ」
くるりと身体を回転させて、簡単にわたしの上に覆い被さってきた。
「ももの余裕、全部なくしてあげよーか」
「っ!」
一気に形勢逆転。
さっきまで、天ヶ瀬くんのほうが余裕なさそうだったのに、今はわたしのほうが余裕がなくなってしまった。