天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
モテるくせに、彼女なんか1人も作ったことない。
それくらい愁桃の気持ちはどこまでもわたしに一途で。
……天ヶ瀬くんとは全くの正反対。
「愁桃のことは……好きだよ」
「んじゃ、なんで彼女になってくんねーの?」
「それは昔から言ってるじゃん。愁桃への好きはそういう好きじゃないって」
愁桃のことは嫌いじゃない。
むしろ、こんなどうしようもないわたしを好きだと言ってくれて、
そばにいてくれて。
心配性で、過保護で、世話好きで。
いつもこうして、わたしを朝起こしに来てくれて。
こんないい人滅多にいない。
だから、一度は愁桃のことそういう対象で見てみようって努力したこともあった。
だけど、どうしてもわたしの中にいる天ヶ瀬くんを上回ることはなくて。