天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



「俺はこんなにお前が好きなのにな」

「………」


そのまま、愁桃の会話は終わって
2人で学校に向けて歩き出した。


いつも何か会話をするわけじゃないけど、愁桃とは何も話さなくても並んでいるだけで落ち着く。


学校に着いて、門をくぐって、下駄箱のところで。


「若菜ぁ、元気出して!」

「うぅ……っ」


涙を流す女の子がひとり。そしてそれを励ます子がひとり。

まだ朝だっていうのに、下駄箱のところでこんな盛大に泣いているということは何かあったに違いない。


少なくとも自分には関係ないと、下駄箱をパカっと開けて


靴をしまった。


「うぅ……なんで、わたし何がダメだったのかなぁ」

「若菜は何にも悪くないよ!!」


他人のフリで、その場を通りこそうとしたのに。

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