天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
「悪いのは天ヶ瀬くんだよ!」
……どうやら、他人のフリはできなさそうだ。
泣いてる子をよくよく見ると、昨日天ヶ瀬くんに駆け寄っていた女の子だった。
そういえば付き合ったばっかりだったんだっけ。
そうか、わたしが天ヶ瀬くんと付き合うことになってしまったから
結果、ひとりの子が傷つく形になってしまったんだ。
まあ、それは分かりきってたことだから、今更罪悪感とかなんて感じないけど。
「なんで急に別れようなんて……っ」
その子をチラッと横目で見て、そのまま横を通過した。
教室まで向かう廊下の途中で。
わたしの少し後ろを歩く愁桃が。
「あんな最低なやつがそんなにいいのかよ」
最低なやつ……か。
「……最低なのはわたしも一緒だよ」
「は?」
「わたしもあの子傷つけた原因でもあるだろうし」