天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
まさか、天ヶ瀬くんがそんなこと言ってくれるわけもなく。
後輩の女の子たちに聞こえないように
耳元でボソッと。
「あんま面倒なことにならないよーにね」
こんなこと言って、わたしを置いて去っていってしまうんだから。
去っていく背中をキリッと睨んでやった。
こんなことになっても、天ヶ瀬くんは決してわたしを助けてなんかくれない。
一応付き合ってるのに、一緒に帰ったりなんかはしなくて。
お互い連絡先も知らない。
会話なんか滅多に交わすことなくて。
倦怠期の夫婦かよって。
形だけ付き合ってるってだけで、現状は昔の付き合ってない頃と何にも変わっていない。
ただ、変わったことといえば、わたしが女子たちに絡まれる回数が増えたのと、愁桃がますます口うるさくなったことくらい。