天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
『鏑木愁桃』
あぁ、もう。このままこの電話に出て助けてもらったほうがいいかもしれない。
だけど。
プツッと画面を切った。
どうしてかって?
だって、もしここで愁桃に助けを求めたら、こんな目に遭ったのは天ヶ瀬くんのせいだとか言って、もっとうるさくなりそうだもん。
愁桃を頼れないとなると……
花音のことが浮かぶけど、残念ながら今日は彼氏さんとデート。
そんな中、呼び出すわけにもいかない。
残るは……
ふと、天ヶ瀬くんが浮かんだ。
「ははっ、まさか……」
いままでだって、今朝だって
わたしが困っていたって助けてなんかくれない。
そういう人だっていうのはわかりきってるのに。
ここで、天ヶ瀬くんを思い浮かべてしまうわたしって何だろう?