天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
そして、この人はとんでもないことを言いだしてくる。
「ねー、もも」
「な、なに?」
「……キスしたい」
ピシッと表情が固まった。
ただの気まぐれでこんなこと言ってきているに違いない。
「は……?いや、何言ってるの天ヶ瀬く……」
もう、こんなことを言ってる間にも
天ヶ瀬くんは慣れた手つきでわたしに触れてきた。
「したい気分になった。だからする」
そんな気まぐれなことが許されるだろうか。
普通なら許されるわけなんかないのに…。
許してしまうわたしは、どこまでもバカだ。
好きでもないくせに……。
わたしのことなんかなんとも思ってないくせに……。
いろんな感情が巡ってくるけど、迫ってくる手がそんなこと考えさせないようにする。