天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



わたしの髪を耳にスッとかけて
ジワリと、指で唇に触れてくる。

この動作ですら、胸の音がバクバク鳴り止まない。

ダメだ……逃げられない。


覚悟を決めてギュッと目を瞑ると
フッと笑い声が聞こえた。


そして、チュッと軽く頬に柔らかい感触が触れた。

驚いて、目を開けると。


「力入りすぎ」


そう言われた時には、もう遅かった。


頬にキスをされて、安心したのはつかの間だった。

完全に油断していた。


そのあとすぐに、吸い込まれるように唇が柔らかい感触で包まれた。

はじめてした時より、少しだけ長い。

そして、さりげなく唇を甘く噛まれる。

身体がピリッと痺れる。


思わずギュッと手に力を入れると、
その手に簡単に指を絡められて、さらに動揺する。

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