天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
こんな天ヶ瀬くんは見たことがない。
自らのネクタイに指をかけて、シュルッと緩めた。
この動作ひとつに色っぽさを感じてしまう。
「……もも」
「ちょっ、耳は……っ」
急に耳元で名前を囁かれて、身体がピクッと反応する。
なんとか、逃れようと身体をよじるけど、それに気づくと。
「……抵抗する余裕あるんだ?」
両手首を片手で簡単に押さえつけられてしまった。
このままだと、確実に危ない予感しかしない。
いくらバカなわたしでも、この状況が何をするのかくらいわかる。
何もかもはじめてなわたしとは違って、天ヶ瀬くんには余裕がある。
今だって、見下ろす瞳はわたしの反応を楽しんでいる。
きっと、慣れてないってことがわかってしまうくらい。