天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



窓側ってこともあって、太陽の光が天ヶ瀬くんの髪をさらに明るく見せる。


今この瞬間を、1枚の写真に残せたらいいのに……なんちゃって。


そんなバカなことを考えながら、前に向き直って、プリントに目を向けた。


それから必要なことを記入していこうとした時だった。


「ねー」


後ろからそんな声がして、背中をツンツンされた。


その声に、触れてくる指先に

ドキッとしながら


前に向き直った身体を、再び後ろに向かせると。


「な、なに?」

今度は横顔ではなくて、正面に向き直っていて、しっかり目が合った。


ダメだ、この顔に正面からしっかり見つめられると、心臓が騒がしく動き出す。

だけど、わたしがそんなことになっているとも知らない天ヶ瀬くんは。


「シャーペン貸してくれない?」


そんな呑気なこと言ってくるんだから。

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