天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。



「持ってきてないの?」

なんとか平然を装って話すけど、やっぱり緊張してしまう。


「んー、忘れた。だから貸して?」


すぐに自分が使っていたシャーペンを
貸してあげた。


「どうぞ」

「ん、ありがと」


シャーペンを手渡しするときに、少しだけ天ヶ瀬くんの指に触れた。

細い指に、綺麗な爪。

この指にもっと触れることができたらいいのに。


そのまま、会話はそこで終わり。


わたしと天ヶ瀬くんはただのクラスメイトで、せっかく席が近いのに話す機会なんかほとんどない。


だからこうやって何気ないことで話せることが自分にとってはかなり嬉しかったり。

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