天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
そのままいろいろお店を見て回った。
歩き疲れてしまったので、近くにあったベンチに腰を下ろした。
「つかれたぁ……もう歩けない」
「少し歩いただけじゃねーか」
「歩くの好きじゃないもん」
「知ってる。昔はよく俺がおんぶして帰ったもんな」
「それは遊び疲れた時だけだもん!」
さすがにこの歳になったら、そんなことできるわけないけど。
「今日もおんぶして帰ってやろーか?」
「けっこーです」
そんな他愛のない話をしていたら、ある人物がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
遠目だけど、それが誰だかわかってしまう。
さっきまで上がっていたテンションは一気に急降下していった。
表情も間違いなく、さっきよりも曇っている。
ドクッと心臓が変な音を立てながら、身体から変な汗が出てきた。