天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
ほんの少し前まで会いたがって人が今近づいてきてるっていうのに……。
「おい、もも。どーした?」
わたしの不自然な様子の変化に気づいた愁桃の問いかけに応えることができない。
声が出ない、言葉も出ない、
表情もまともに作れない。
「……おい、あれって」
わたしの視線の先を辿った愁桃にも気づかれてしまった。
「なんで天ヶ瀬が他の女と一緒にいんだよ」
そう……。こちらに向かってくる天ヶ瀬くんの隣には女の子がいた。
女の子……というより女の人って言ったほうがいいかもしれない。
年上の綺麗な人だ……。
徐々に距離を詰められて、ついに向こうにもこちらの存在を気づかれてしまった。