天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
そして、わたしたちの目の前に来て足を止めた。
「佑月どーかしたの?」
親しげな呼び方……。
そして、天ヶ瀬くんの腕にギュッとしがみつく細くて白い腕。
ダメだ……この場をどう乗り切ろうとか、そういう考えに至ることができないくらい頭が真っ白だ……。
「……何してんの、もも」
天ヶ瀬くんが口を開いた。
だけどその声のトーンは決していいものとは言えない。
明らかに怒りが混じっているような…低い声だ…。
心なしか、わたしを…いやわたしたちを見る視線が冷ややかに見える。
だけど、わたしだって同じことを聞き返したいところだ……。
隣にいる女の人は誰なのか
どういう関係なのか。
「……聞いてんの?」
声を絞り出そうとするけど、まったく出そうにない。