天ヶ瀬くんは甘やかしてくれない。
「そんな顔しないの。愁桃くんを選べば少なくとも苦しい想いはしなくて済むのにね」
「うぅ……。わたしだって好きになれるものならなりたいよぉ……」
それができないから大変……。
人を好きになるってこんなに難しいことだったっけ?と、そんな基礎的なことすらわからなくなってきている。
「わたしだったら迷わず愁桃くん選ぶけどね。ってか、幼なじみ同士ってだいたい恋愛とかに発展していくじゃん」
発展してくれるものならしてくれればいいのに。
「あんまり天ヶ瀬くんに深入りしちゃダメよ?ももには悪いけど、どうせ向こうは本気で付き合ってるわけじゃないだろうし」
花音の言うことが正論すぎて、首を縦に振ることしかできなかった。