守りたい人【完】(番外編完)
第一章
帰ってきた風景
『志穂は、しっかりしてるから、俺がいなくても一人でやっていけるよな』
3年付き合った彼から聞いた最後の言葉は、それだった。
同じインテリア関係の会社に勤める、5つ年上の彼。
仕事もできて、落ち着いていて、しっかりしていて、大人な人。
子供な私は、そんな彼に必死に釣り合おうと背伸びをしていた。
聞き分けの良い女を演じていた。
そんな私を好きでいてくれた彼とは、結婚も考えていた。
一緒に住む話も出ていたし、両親にも会わなきゃねって話していた。
とうとう私も結婚!
ウキウキと定番の結婚雑誌も買って、髪も伸ばして、地道にダイエットも始めていた。
それなのに――。
ある日、忘れ物をして真っ暗な事務所に戻った瞬間見たのは、私の後輩とキスをする彼。
大事そうに髪を撫でて、目を見て微笑んで、何度も何度もキスをしていた。
そんな表情、私には見せた事ないくせに。
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