守りたい人【完】(番外編完)
こっちに帰ってきて、一ヵ月が過ぎた。

相変わらず私の毎日は、畑仕事と掃除と洗濯とご飯用意。

そんな専業主婦のような日々に、そろそろ危機感を覚えてきた所だ。


だけど、両親の世界一周旅行が終われば、私のここでの仕事は終わる。

もちろん、ずっとここでこの仕事をする事も出来るけど、そんなつもりサラサラない。

確かに、以前よりここの事を好きになってきたし、素敵だなと思う部分が出てきたのは事実。

だけど、この若さでここで一生を送るのは、どうしても嫌だった。


「また東京に戻ろうかなって思ってるんです」

「なんでそんな東京に拘るわけ」

「だって、どうせ行くなら東京かなって」

「典型的な田舎者の考えだな」

「ちょ、失礼ですよ!」

「仕事なんて、どこにでもあるだろ」

「東京の方が沢山仕事があるんです!」

「その何倍も人が集まってくるんだから、逆に仕事が無いだろ」


まぁ、朝比奈さんとは相変わらずこんな感じ。

不愛想で、意地悪で、口を開けば素っ気無い言葉ばかり。

それでも、真っ直ぐに届く言葉には力があって、誤魔化しがないから何かと気づかされる事もあったりする。

といっても、半分はイライラして終わっているけど。


はぁと溜息を吐きながら、黙々と食事を続ける朝比奈さんを横目にキッチンへと戻る。

そろそろ、次の就職先の目星だけでも見つけとかないと苦労するのは自分だ。
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