守りたい人【完】(番外編完)
と言っても、この平凡でスローライフな日々に染まってしまった今、なかなか重い腰が上がらないのが現状。

それに、こっちにいる限り面接などは受ける事ができないから、どうしようもない。

焦る気持ちだけが早歩きを初めて、現状は何も変わっていない。

将来に一抹の不安を感じながら、ペラリと求人誌を開いた。

その時――…。


Trrrrrr―――。


ポケットに入れておいた携帯が突然鳴って飛び上がる。

慌てて取り出して画面を見れば『母』の文字が浮かんでいた。


「もしもし?」

『あ、志穂? おはよう!』

「うん、おはよ。どしたの?」

『ねぇ、今お母さんどこにいると思う~?』

「え?」

『あ、それよりお土産送っておいたから食べてね。いろんな温泉地回ってきたの』

「うん、で、お母さん」

『沖縄まで行ったのに、お父さんったら泳げないの一点張りで、もう~うふふふふふふふふ』

「――」

『もうちょっとで、いよいよ世界一周よ~。お母さん、少しだけ英語も勉強したのよ! アイキャンフライ!』


最強にマイペースな母の様子に、呆れてものも言えない。

相変わらずな様子に苦笑いを浮かべるが、とりあえず元気そうで安心した。
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