守りたい人【完】(番外編完)
「それで、お母さん、どしたの? 何か用事があったんじゃないの?」
放っておいたら永遠に喋りそうだと思って、話の区切りがいい所で本題に入った。
すると、母も温泉地での珍道中話を途中でストップしてくれた。
そして、突然ぶっ飛んだ事を言い出したんだ。
『そうそう! 今日からね、そこに新しい下宿人の方が来るわよ』
突然言われた言葉に、目が点になる。
え? と思う間もなく、母は再びマシンガントークに火を付けた。
『本当は旅行に出る前には決まってたんだけどね、もう旅行に行くのが楽しみすぎて、すっかり忘れてたわ~。やだもぅ~』
「ちょ、ちょっと待って、今日から!?」
『志穂にも伝えなきゃって思ってたのに、お母さん、うっかり』
「待ってよ! そんな突然! だって何も準備してないよ!?」
『適当にやっちゃって! あ、いい人そうだったらから安心して大丈夫よ。そうだ、今日は何作るの? 引っ越し祝いに、お蕎麦かしら~~?』
マイペースさに拍車がかかりすぎて、もはや会話にならない。
でも、要するに今日から新しい下宿人が増えるって事!?
でも、部屋とか全然準備してないし、そんな事突然言われても困るんだけど!
『あ、お父さんが起きたわ。じゃぁ、また電話するわね~。またね~』
そんな私とは正反対に他人事のように母はそう言って、一方的に電話を切った。