守りたい人【完】(番外編完)
「あ~危ない危ない!」
玄関扉を開けた瞬間、そんな大きな声が聞こえて反射的に飛び出しそうだった体を止める。
驚いて息を飲めば、目の前にはいくつも積み上げられた段ボールが鼻先スレスレの所にあって、それが頼りなくフラフラと左右に揺れていた。
え? と思って体を後ろに引いて下を向けば、誰かの足がおぼつかない様子で踏ん張っていた。
「ちょい、そこの人! 一番上の段ボール下ろして!」
「え?」
「早く早く! もうバランス崩れそうやねんっ!」
「は、はい!」
その切羽詰まった様子に、慌てて不安定に揺れる段ボールタワーの一番上を持ち上げる。
想像以上の重さに、腰が砕けそうになったけど寸での所で踏みとどまった。
そして、プルプルと震える腕で慎重に地面にそれを下ろした。
すると。
「いや~助かった助かった! もうちょっとで、俺の下着が玄関先に散らばる所やったわ」
アハハハハという何とも豪快な笑い声が聞こえて顔を上げると、さっきまで持っていた段ボールを床に置いた一人の男性が朝日を背に立っていた。
一瞬逆行でその顔が見えなかったけど、しゃがみ込む私の隣に同じように屈んだ瞬間、その顔がハッキリと見えた。