守りたい人【完】(番外編完)
「俺、鍛冶 清一郎(かじ せいいちろう)28歳。独身~。今日からお世話になりますわ~」

「あ、はい。鍛冶さん、ですね。母から話は伺っております」

「も~そんな堅苦しいの止め止め! 仲良くしよなぁ」


空気より軽いそのノリに眩暈がしそうになる。

すると、話声を聞きつけてか、玄関先に朝比奈さんが現れて、肩を組む私達を見て僅かに目を見開いた。

そんな朝比奈さんを見て、鍛冶さんが「おぉ~!」とオーバーすぎるリアクションで声を上げてから、握手を求めるように朝比奈さんに歩み寄ってニッコリと笑った。


「今日からここでお世話になります、鍛冶です。おたくもここの下宿人?」

「――…朝比奈 誠です」

「なんや暗いなぁ。あ、もしかして低血圧か? あかんで、こんな自然豊かな所におるのに、そんな陰気臭い顔。イケメンが台無しや!」

「――」

「も~こんな所で立ち話もなんやし、中で話そうか~。あ、おっちゃん、送ってくれておおきに~」


その言葉に、え? と思って駐車場を見ると、近所のおじさんが軽トラに乗ったまま、にこやかに手を振っていた。


「お知り合いなんですか?」

「なんも。タクシー捕まえようと駅で待ってたら、ちょうどあのおっちゃんが軽トラで通ったから、ここまで乗せてもろたんや」
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