守りたい人【完】(番外編完)
おじさんにニコニコと手を振りながらそう言った鍛冶さんの言葉に、開いた口が塞がらない。
朝比奈さんも同じだったのか、何も言わずに呆然と鍛冶さんを見つめて固まっていた。
「あ~それより、腹減ったわ」
「あ、ちょうど朝ご飯できてますけど……」
「ほんま!? さっそく志穂ちゃんのご飯食べれるなんて、ラッキーやわ~」
「志穂ちゃん……」
「ほな、3人で朝飯にしよか~。あ、お土産もあるで。そや、朝比奈さん悪いけど、荷物運ぶの手伝ってもらえるか」
そう言って、固まっている朝比奈さんの肩を叩いた鍛冶さんが我先に玄関をくぐって家の中へと入っていった。
玄関先に残された私と朝比奈さんは圧倒されたように、その場で固まるだけだった。
「……という事なので、今日から一人下宿人が増えます」
「みたいだな」
ポツリと静かに呟いた朝比奈さんの声が朝の静かな玄関先に落ちる。
ようやく仕事や環境にも慣れてきたのに、どうやらまた一波乱ありそうだ。
「2人とも、はよ~」
あの、台風みたいな『鍛冶さん』を中心に――。