守りたい人【完】(番外編完)
「それにしても志穂ちゃんは偉いなぁ。両親の代わりに、下宿屋切り盛りして」
「いえ、そんな……」
「俺は基本パソコンさえあれば、どこでも仕事できるさかい、何か手伝ってほしい事あれば気にせんと言ってな」
「あの、お仕事は何を?」
「ウェブデザイナーや」
「なんか難しそうなお仕事……」
「名前だけ聞いたらな。実際は簡単やで」
そう言って、ケラケラ笑う鍛冶君は今まで静かだった家の中を明るくしてくれた。
まだ出会って1日も経っていないのに、ずっと昔から知ってる友人みたいに感じるから不思議だ。
――…鍛冶君が家に着くや否や、歓迎会をしてほしいと言い出して急遽夜に簡単な歓迎会をする事にした。
まだ部屋の準備とかも整っていないと言えば、勝手に自分でやるから気にしなくていいと言われた。
その、あっけらかんとした性格には驚かされるが、テキパキと段取りよく動いて、夕方には山ずみになっていた段ボールも消えて、部屋の中が整っていた。
物凄く軽い人かと思っていたけど、案外しっかりしているのかもしれない。
「やっぱ、みんなで食べるご飯は旨いなぁ~」
そう言って、ビールを水のように飲んでいく鍛冶君の飲みっぷりは見ていて清々しい。
初めはどうなるかと思ったけど、底抜けに明るい性格と強引な物言いで、鍛冶君は来て早々ちゃっちゃと家のルールを変えていった。
まずは、食事はみんなでする事。
せっかく同じ屋根の下にいるのに、みんなで食べないのは勿体ないと。
その音頭の元、今日から食事は3人揃って食べる事になった。
まぁ、私も一人で食べるご飯は寂しいなと思っていたから賛成した。