守りたい人【完】(番外編完)
またやってしまった、と深い溜息を吐きながら俯く。

少し朝比奈さんとの距離を縮められたと思ったのに、これじゃまた離れて行ってしまう気がする。


「朝比奈さんって、一匹狼みたいだね」


そう言って、鍛冶君と並んでパンを食べるたまちゃん。

私の家にお裾分けに持ってきてくれたはずなのに……。


「ちなみに、俺がここに来た理由は、静かで自然豊かな場所で仕事がしたかったから。あとは、自分の作った野菜を収穫して食べてみたかったから~」

「ウェブデザイナーでしたっけ?」

「そうそう。コンクリートジャングルと下水の匂いと満員電車の生活には疲れた。幸い、俺の仕事はどこででもできるしなぁ。だったら、自然豊かなここで野菜育てながらまったり仕事できたら、一石二鳥や~ん! って」

「し、自然が好きなんですね……」

「めっちゃ好き! もうすぐ山菜とか採れるんちゃうん? 俺、タラの芽めっちゃ好き~」

「あ、はい。じゃぁ、今度取ってきます」


マシンガントークに押されて、顔が引きつる。

そんな私と鍛冶君の会話をケラケラと笑いながら見ているたまちゃん。


確かに都会の生活から見たら、ここは長閑でいい場所かもしれない。

心も体も少し休ませるには、ちょうどいい場所。

だったら、朝比奈さんも休みにきたのかな?
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