守りたい人【完】(番外編完)

そんな私に気づいてか、たまちゃんがニヤニヤした顔で私の顔を覗き込んできた。

その顔の意味が分からなくて首を傾げる。


「志穂ちゃんは~、朝比奈さん派?」

「えぇ!?」

「今、朝比奈さんの事考えてたでしょ~」

「いや、考えてたけど、そういう意味じゃなくてっ」

「じゃぁ、どんな意味?」

「ん~……、どうして何も教えてくれないのかなぁって」


何か言えない理由でもあるんだろうか。

それとも、ただ言いたくないだけ?

何か私にできる事があれば、力になりたいのに。


「そうだね~。でも、言わないんだったら、言ってくれるまで待つしかないよ」

「そうだよね……」

「でも、優しい人だとは思うよ?」

「え?」

「近所のおばちゃん達が言ってた。畑仕事や力仕事があれば何も言わずに手伝ってくれるし、近所の子供達も懐いてるみたいだし」

「……」

「普通、そんな事できないじゃない? 無口なだけで、本当は優しい人なんだよ~」


その言葉にコクンと頷く。

もちろん、朝比奈さんが優しいのは、この前の桜の件で分かっている。

だからこそ歩み寄りたいのに、朝比奈さんは自分の殻に閉じこもって出てこない。

まるで触れられるのが嫌みたいに。
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