守りたい人【完】(番外編完)

「あの、朝比奈さん」

「何」

「あの物干し竿、直してくれたの朝比奈さんですか?」


恐る恐る聞くと、一瞬視線を持ち上げてこちらを見た朝比奈さんだったけど、再び視線を下げて、何も言わずに置いてあったペンチを持って2階へと上がっていってしまった。

その背中を見て、間違いなく朝比奈さんだと確信する。


「あれは、間違いなく朝比奈さんやな」


鍛冶君も同じ事を思ったのか、ニヤニヤしながら朝比奈さんが消えていった階段の方を向いて笑っていた。

その姿を横目に、ポカポカと胸が温かくなる。

なんだか無性に嬉しくて、無意識に頬が上がる。


あの山の事件以来、朝比奈さんの見方がまた少し変わった。

目が合えば胸が締め付けられるし、何か会話が少しでも弾めば嬉しくて堪らなくなる。

自然とその姿を目で追って、小さな変化にも一喜一憂している。


私はこの気持ちを知っている。

この締め付けられる甘い痛みと、焦がれるような想いを知っている。


きっと、私は朝比奈さんが好きなんだと思う。

確信はないけど、きっと、好きなんだと思う。
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