守りたい人【完】(番外編完)
だからと言って、別に今直ぐどうこうしようとかは思わない。
だって、私と朝比奈さんの関係は『大家さん』と『下宿人』だから。
きっと想いを伝えた所で、朝比奈さんにとっては迷惑でしかない気がする。
それに、私の気持ちを打ち明けて、ぎこちない関係に逆戻りしたら嫌だ。
ようやく打ち解ける事が出来たんだから、今はその変化を楽しみたい。
まだ生まれたばかりのこの気持ちを、大事にしたい。
そんな事を思いながら、ピカピカになった物干し竿を見て笑った。
「な~な~。ちょっと提案なんやけどな~」
夕食終わり。
食べ終わった食器を片付けていると、鍛冶君が突然そう言いだした。
その声を聞いて、私と朝比奈さんは手を止めて鍛冶君の方に視線を向けた。
「どしたんです?」
「あんな~いきなりやけどな~、この下宿屋を少しリフォームせんかなぁと思って」
首を傾げて問いかけた私に、鍛冶君がニヤリと笑って突拍子もない事を言い出した。
あまりにも突然な提案に、瞬きも忘れて固まる。