守りたい人【完】(番外編完)
「リフォーム?」
そんな私に代わって、朝比奈さんが会話を続けてくれた。
すると、ワクワクした様子の鍛冶君が再び椅子に腰かけて、徐にノートパソコンを開いた。
「ここって、どえらい田舎で何もないやんか? だけど、逆にここまで自然豊かで、昔の風景がそのまま残されてる土地って少ないと思うんよ?」
「はい……」
「中途半端に田舎な所ってどこにでもあるけど、ここは本当の意味で昔の暮らしを大切に守ってきていると思う」
「――」
「だけど、それだけだと若い人はどんどん都会に出て行って過疎化が進んで空き家が多くなる。人の手が入らなくなれば、そこはただの荒れ地となって誰も寄り付かなくなる」
「――」
「それを危惧したこの町が、町興しとして田舎体験や、この土地ならではの物産品を売り出し始めたけど、一向に軌道には乗らないみたいや」
その言葉を聞いて、思い出した事がある。
少し離れた所に大学ができた事を期に、この町を活性化させようと町興しが始まったらしい。
両親達もそれに合わせて下宿屋を始めたけど、本来の目的であった学生の下宿人は全く現れず、実際来たのは、この2人のみ。
町全体でも人が増えた様子はないし、もはや諦めモード。
みんなが失敗だったと内心思い始めていた頃だ。