守りたい人【完】(番外編完)
結局知名度も、有名な観光地も、特産品もない地味なこの町は、どれだけ自然豊かでも誰の目にも触れない。
逆に、この2人がここに辿り着いた事でさえ不思議だ。
ここだけ時間が止まったように昔のままで、人口はどんどん減っていくのみ。
この2人が出ていけば、この『姫野荘』だってどうなるか分からない。
先行きが怪しい現実を突きつけられて、はぁっと溜息を吐く。
そんな私を見て、鍛冶君がニヤリと笑った。
そして、向かいに座る私達にパソコンの画面をクルリと向けた。
「それでや。この姫野荘が、町興しの起爆剤になろうと思ってな」
その言葉と共に画面に目を移せば、そこには元来あった質素な『姫野荘』のHPとは比べ物にならない、今時のお洒落な姫野荘の新しいHPが出来上がっていた。
和モダンテイストで、四季折々の草花に囲まれたこの町の美しい写真と共に、どこかの高級隠れ宿並みにお洒落なHP。
バックに音楽まで流れて、完成度が凄い。
「こ、これ、うちのHP?」
「まだ試作品やけどな。どや? いい感じやろ」
「凄いです! どこかの高級な温泉宿みたいです!」
あまりにも素敵なそのHPに食いつくように魅入る。
だって、本当に素敵だったから。