守りたい人【完】(番外編完)
グッと唇を噛み締めて、伏せていた視線を上げる。

ちゃんと伝えなきゃ。

心の中でそう唱えて、口を開いた。


「朝比奈さんの事が、好きです」


そう言った瞬間、風が私達の間を通り抜けた。

私の長い髪が、宙に舞って揺れる。

その先に見えたのは、悲しそうに笑う鍛冶君の顔。


その表情を見た瞬間、泣き出したい気持ちになる。

どうしたらいいのか、分からない。

どうしようもなく交わらない互いの気持ちが、風に乗って揺れる。

それでも、鍛冶君はすぐにいつものように明るい笑顔を作って、唇を噛み締めて涙を押し込める私の髪を優しく撫でた。


「そうか」


そして、それだけ言って笑った。

その瞬間、鼻の奥がツンとして再び涙が込み上げてくる。

だから、慌てて頭を下げた。


「ごめんなさい」

「――」

「鍛冶君の事、大好きだけど。だけど、朝比奈さんのそれとは違うの」


鍛冶君の事、本当に大好き。

いつも調子のいい事ばっかり言ってるけど、本当は誰よりも周りの事を見て考えてくれている。

のんびりしてるように見えるけど、頭の回転が速くて何事もテキパキとこなして。

そして、いつも私の味方でいた。


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