守りたい人【完】(番外編完)
その姿を見て目を見開くと同時に、慌てて立ち上がる。
「あ、えっと、今のは独り言でっ」
「――」
「別に深い意味はっ」
独り言を聞かれた事に恥ずかしさが込み上げて饒舌になる。
アタフタと両手をバタバタさせて、必死に言葉を紡ぐ。
「っていうか、えっと、お仕事は?」
それでも、何も言わずに深い溜息と同時に椅子に腰かけた朝比奈さんを見て、その顔を覗き込んでそう言う。
こんな時間に帰ってくるなんて今までなかった。
疑問に思って首を傾げると、その黒目がちな瞳がゆっくりと移動してきて私を映した。
突然目が合った事で、きゅっと心臓が収縮する。
「終わった」
「終わった? え、珍しく早いんですね」
「――」
「朝比奈さん?」
珍しく返事を返してくれた事に嬉しく思いながらも、いつもと少し違う様子の朝比奈さんを見て、首を傾げる。
すると、小さく息を吐いた朝比奈さんがフイッと私から目を離してポツリと呟いた。
「帰された」
「え?」
その言葉に、ドクンと心臓が鳴る。
もしかして、という言葉が脳裏に浮かぶ。