守りたい人【完】(番外編完)
そんな私とは正反対に、何も言わずにフリーズしたように固まる朝比奈さん。

瞬きさえも忘れている姿を見て、聞いてる? と首を傾げたくなった。

それでも、勢いに乗った私は積もりに積もった想いを口にした。


「本当は言わないつもりだったんです。この関係を崩したくないし、それで気まずくなるのも嫌ですし」

「――」

「……それでも、あの日朝比奈さんが出て行ったから」

「――」

「もう会えないかもしれないって思った瞬間、自分の気持ちを伝えなかった事に、酷く後悔したんです」


あんなに後悔したのは、きっと生まれて初めてだった。

こんな関係の人を好きになった事なんてないし、自分から告白した事もなかったから。

大切な事をいつも後回しにするのは、私のダメな所かもしれない。


だけど、そう気づけてよかった。

取り返しがつかなくなる前に、もう一度こうやって隣で笑いあえて良かった。

もう、大切な事を後回しにしたりしない。

今、私の隣にいるあなたは『必然』ではないのだから。


「朝比奈さん。あなたの事が好き」


この想いを届けたい。

本当の私の気持ちを知ってほしい。

私を見てほしい――。

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