守りたい人【完】(番外編完)
ハァハァと息が上がる中、いつの間にか世界は茜色に染まっていた。
その真っ赤な夕日が訳もなく心を不安にさせて、今にも泣きだしそうになる。
それでも、夢の中でも意地っ張りな私は、泣き顔を誰にも見せまいと長く伸びた髪で顔を隠した。
昔からそうだった。
誰かに自分の弱い所を見られるのが嫌だった。
泣き顔なんて誰にも見せれなかった。
頑固で負けず嫌いで、意地っ張りな私。
グッと唇を噛み締めて、顔を上げる。
すると、さっきまではいなかったのに、遠くの方にポツンと立つ1人の背中が見えた。
その姿を見て、ハッとして勢いよく駆けだす。
転びそうになる中、必死にその背中に向けて手を伸ばす。
そんな私に気づいたその人が、ゆっくりと振り返ろうとした。
あぁ、やっぱり、朝比奈さんだ。
そう確信した瞬間、勢いよくその胸に飛び込む。
それと同時に胸いっぱいに朝比奈さんの香りが広がって、安堵の溜息が漏れた。