守りたい人【完】(番外編完)
「朝比奈さんっ!」


必死に固まってしまった足を動かそうとするが、ビクともしない。

だけど、その時、不意に人の気配がして顔を上げる。

すると。


「鍛冶君?」


いつの間にか、目の前には項垂れた鍛冶君が立っていた。

その姿を見て、訳もなく胸がザワザワする。


そして、その手に握られていたものを見て目を見開く。

視線の先にあるのは、血に濡れた迷彩服。

それを見た瞬間、ドクンと心臓が尋常じゃない動きを始める。

口が一気にカラカラになってきて、体が震えだす。


「鍛冶君……それ……その服」

「朝比奈さんが、死んだ」

「え?」

「任務中に、死んだ」


そっと顔を上げた鍛冶君は、大きな瞳に涙をいっぱい溜めて、そう言った。

そして、持っていた迷彩服を瞳を揺らす私に手渡した。


その瞬間、香るのは、さっきまで香っていたあの匂い。

それが朝比奈さんのものと分かった瞬間、一気に頭が真っ白になった。

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