守りたい人【完】(番外編完)

「眠れないのか」


不意に聞こえた声に、視線をそちらに向ける。

すると、壁に背中を預けて座っていた朝比奈さんが私を見下ろしていた。

その姿を見つめながら、そっと体を起こす。


「なんだか眼が冴えちゃって」

「まぁ、この状況で爆睡できる人は少ないだろうな」

「――」

「でも、寝れる時に寝ておかないと、もたないぞ」


そう言った朝比奈さんは、どこか慣れている様子だった。

そんな姿を見つめて、ゴソゴソと居住まいを正して、小さく声を上げる。


「朝比奈さんは、以前にも経験あるんですか?」

「ん?」

「避難っていうか、こういった事に」


家からここに来るまでも冷静沈着で、適格な指示を出して私や鍛冶君をここまで連れてきてくれた。

ここに着いてからも困っている近所の人達に声を掛けたり、若い男の人達に何やら指示を出していた。

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