守りたい人【完】(番外編完)
「朝比奈さん……?」


小さくその人の名前を呼んで体育館の中を見渡す。

それでも、その姿はどこにもなくて、一気に不安になった。


鍛冶君を起こさないように、ゆっくりと立ち上がって出口まで向かう。

そして、重たい体育館の扉を開けて辺りをキョロキョロと見渡した。


私が卒業した年に建て替えられたばかりのここは、記憶の場所よりも新しい。

シンっと静まり返ったそこには、雨の音しか聞こえない。


「どこ行ったんだろ」


どこを探してもいないから、徐々に不安が大きくなっていく。

まさか家に戻ったなんて事はないし……。

そんな事を思いながらも、もう少し探してみようと思った、その時――。


「……朝比奈さん?」


不意に外に繋がる扉のすりガラスに映った人影。

目を凝らしてみれば、薄らと人影が映っている。

外にいたんだと思いながら、吸い寄せられるようにその扉に向かって歩き出す。

そして、ゆっくりとその扉を開けた。
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