守りたい人【完】(番外編完)
「大丈夫だ。必ず帰るから」

「――」

「お前はここで、待ってろ」


じんわりと感じる熱が、涙腺を崩壊させる。

ぐっと強く唇を噛み締めて、これ以上涙を落とすまいとする。


行かないで。


そう言いたいのに、喉が詰まって声が出ない。

フルフルと拳だけが震えて、何も言えない。


すると、ゆっくりと頭に乗っていた手が下りる。

ハッとして弾けるように顔を上げると、私に背を向けて歩き出した朝比奈さんがいた。

その姿を見て、一気に背筋が凍る。

そして、反射的にその背中に向けて駆けだそうとした時。


「―――っ」


不意に掴まれた右手。

ガクンと前に出ていた体が止まる。

勢いよく振り返ると、真剣な顔をした鍛冶君が私の右手を掴んでいた。
< 317 / 456 >

この作品をシェア

pagetop