守りたい人【完】(番外編完)
呆れてものも言えないとは、この事だろうか。

新婚並みにキャッキャとはしゃぐ両親を目の前にして呆然とする。

そんな私を見て、父はニッコリと笑った。


「荷物は前からコツコツ準備してあったんだ。来週には出発するぞ」

「志穂、お土産何がいい? いろんな国に行くごとに送るわね」

「ついでに志穂のアパートの荷物も整理して、こっちに郵送しておくからな」

「一石二鳥ね、うふふ」


私の意見などカチ無視で、どんどん話が進んでいく。

というか、これは相談ではなく事後報告。

きっちり旅行の契約も済んでいるし、ちゃっかり準備もしてある。

これは、もしかして元々私に下宿の仕事を押し付けて、バカンスに行く予定をずっと立てていたのではないかとさえ思えてきた。


ハメられた、と思いながら大きく溜息を吐く。

それでも、キャッキャと楽しそうにはしゃぐ両親を前に言い返す言葉が喉に詰まる。


本当は今すぐにでもこの町を出て働きに行きたい。

でも、そうすると下宿屋を見てくれる人がいないから、前々から計画していたという旅行はキャンセルになってしまう。

そうなれば、この2人が猛烈に落ち込むのは目に見えていた。
< 32 / 456 >

この作品をシェア

pagetop