守りたい人【完】(番外編完)
「さすがの朝比奈さんでも、あの川に飲み込まれたら助からないでしょ」
脳裏に過るのは、まるで生き物のように襲い掛かってきた川の水。
真っ黒な水が、私達を飲みこもうと襲ってくる。
どれだけ鍛えていても。
どれだけ経験が豊富でも、自然の力には敵わない。
こんな夜遅くまで捜索するなんて危険すぎる。
他の捜索部隊の人達が帰ってきている所を見ると、朝比奈さん達の部隊に何かあったのは明白。
だったら、何が――?
「何かあったら、どうしようっ」
今にも擦れそうな声でそう言って、唇を噛み締める。
蘇るのは、先日見た夢。
真っ赤に染まった迷彩服。
朝比奈。と書かれた迷彩服。
失ったのだと気づいた時の、あの狂ってしまいそうな感覚。
それを思い出した瞬間、恐怖が一気に駆け上がってきて体が震えた。