守りたい人【完】(番外編完)
真っ直ぐな鍛冶君のその言葉に、固まったまま聞き入る花井さん。
それでも、さっきまで震えていた拳はそこにはなく、真っ直ぐに鍛冶君を見つめる瞳は徐々に力が籠っていった。
「それが、あんたを庇って辞めていった朝比奈さんにしてあげられる、唯一の恩返しや」
「――」
「まぁ、こんな偉そうな事言える立場やないけどな、朝比奈さんの友人として、あんたに喝入れときたかったんや」
そっと、掴んでいた花井さんの肩から手を下ろした鍛冶君。
そして、小さく溜息を吐きながらも、揺るがない瞳で花井さんを見つめて口を開いた。
「頑張りや。応援しとるさかい」
その言葉に、花井さんの表情が一瞬泣き顔になる。
それでも、ぐっと唇を噛み締めて涙を押し込んだ。
そして、何かを決意したようにコクンと一度頷いて姿勢を正し、敬礼をして私達に向き直った。
「自分はいつか必ず朝比奈曹長のように、立派な自衛官になってみせます」
「――」
「誰よりも強い、第一空挺団の自衛官になってみせます!」
さっきとは別人のように強い眼差しを持った花井さんが、力強い敬礼をした。
その姿を見て、素直にかっこいいと思った。
その胸の内に燃える炎を、かっこいいと思った。
この人が、朝比奈さんが守った人。
自分の志を託した人。