守りたい人【完】(番外編完)

その姿に、思わず泣いてしまいそうになった私に、花井さんの視線が戻ってくる。

そして、凛とした表情で口を開いた。


「あなたは、第一空挺団のモットーをご存知ですか」


そう言われて、首を弱く横に振る。

自衛隊の事なんて全く知らない私は、そんな事知るわけもなかった。

すると、花井さんは優しく微笑みながら口を開いた。


「精鋭無比です」

「せいえい……むひ?」

「空挺隊員は、たとえ最後の1人になっても任務の達成に邁進しなければならない」

「――」

「必ず朝比奈さんは任務を達成します。例え最後の1人になろうとも。それが人命救助ならば、必ず要救助者を助け、ここまで送り届けてくれる。それが、今回の任務なのですから」


迷いのないその言葉に、目の前が開ける。

モヤモヤしていた心の中の黒いものが、消えていく。


「自衛官が何故毎日過酷なトレーニングをすると思います?」

「……任務を、遂行する為?」

「もちろん、それもあります。だけど、一番は自分の命を守る為です」

「――」

「どれだけ過酷な現場や状況に行っても耐えられる肉体と精神を鍛える必要がある。それは、自分自身を守る事に繋がっているんです」

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