守りたい人【完】(番外編完)

瞬きも忘れて固まる私に、花井さんがもう一度声をかける。

真っ直ぐで、迷いのない声を。


「だから、大丈夫です」

「――」

「朝比奈さんは、必ず帰ってきます。信じて下さい」


その言葉が、胸の奥にストンと落ちる。

不安だった心が幾分か軽くなる。


「せやで、志穂ちゃんは心配しすぎなんや」

「鍛冶君はお気楽すぎるんです」

「そうかなぁ~、あ、おにぎり食べへんのやったら頂戴」

「ダメです! これは私のです!」


ケロッとした様子の鍛冶君は、お皿に戻してあった私のおにぎりを食べようと手を伸ばした。

その様子を見て、私は慌ててそのお皿を奪い取る。

そんな私達の様子を見た花井さんがケラケラと笑った。

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