守りたい人【完】(番外編完)
太陽の光を沢山浴びた、トマトやキュウリの夏野菜。
洗いたてなのか、瑞々しく水がついていた。
いくつか手に取って眺めていると、鍛冶君が短く息を吐いて辺りを見渡した。
「しっかし、まさか町興しのPRが、こんな所で役立つとはなぁ」
その言葉に、大きく頷く。
そして、目の前に見える沢山の人達を見つめて目を細めた。
あの震災の後、各地から沢山のボランティアの人達がこの町に集まった。
もちろん自衛隊や消防、警察の人も手伝ってくれて、壊滅的な打撃を受けたこの町を、瞬く間に復興してくれた。
だけど、それだけではなかった。
以前、鍛冶君と朝比奈さんと一緒に町興しの一環として下宿屋『姫野荘』をリフォームしたり、新しくHPを作ったりしていた。
そのリフォームの様子や、この町の事なども、よくHPに載せていたんだ。
それを見ていた人達が、この震災の事を聞きつけて姫野荘にリフォームの手伝いをしたいという人が殺到したんだ。
その事を一早く聞いた鍛冶君の興奮した顔ときたら、凄かった。
もう、興奮しすぎて何を言っているか分からなかった。