守りたい人【完】(番外編完)
それから、瞬く間にリフォームを手伝いたいという人達が名乗り出てきて、今では沢山の人達が、この『姫野荘』のリフォームを手伝ってくれている。
もちろん、あの震災の被害も姫野荘は受けていた。
一階部分には泥水が入り、それを掻きだす作業から始まった。
だけど、今では少しづつ昔の様子に戻ってきている。
寄付金まで集めてくれていて、それでダメになった家財なども買った。
姫野荘だけではなく、ボランティアの若い人達が増えた事で、町中も賑やかになった。
メディアの影響もあり、一躍この町は注目を浴びた。
失ってしまったものもあるけれど、それで得たものも沢山あった。
「そういえば、志穂ちゃんの両親、世界一周旅行から帰ってくるんやって?」
降り注ぐ太陽に目を細めていると、隣にいた鍛冶君がそう言って私の顔を覗き込んできた。
その言葉を聞いて、ゆっくりと顔を横に振る。
「震災の事を聞いた時は、真っ先に帰ってくるっていってたけど、帰ってこなくていいって言ったの」
「え?」
「だってせっかくの世界一周旅行中なのに、途中で中断したら勿体無いじゃない」
「ま、まぁなぁ」
「それに、こんなにも沢山の人が助けてくれているんだから大丈夫って言ったの。それに、あの人達、今インドだって。すぐに帰ってこれるわけないじゃない」
そう言って、クスクスと笑った私を見て、鍛冶君も『せやなぁ』と言って笑い出した。
両親の電話越しの慌てようは凄かったけど、何度も説得して最後まで旅行を楽しんでもらう事にした。
ひとしきり笑って、今日のお昼は何にしようかなぁ、と採れたての野菜を見つめる。
すると。